目次
・人工内耳の手術を受けて思うこと
・人工内耳で聞いた「ありがとう」の言葉
・最後に
人工内耳の手術を受けて思うこと
人工内耳の手術を受けた理由を5つお伝えしました。
私自身は、ポジティブな理由が2つ(①人工内耳の適性があった、②家族を安心させるために手術をした)、ネガティブな理由が3つ(③コロナ禍でコミュニケーションの不便が増えた、④職場での情報格差、⑤講師としての発話の改善)だったと考えています。
たくさんの方から「人工内耳の手術を受けて良かったのか?」という質問を受けます。現時点での結論としては「人工内耳の手術をして良かった」と思っています。人工内耳の手術を受けたこと自体に後悔はありません。私自身に人工内耳の適性があり、当初の想定以上に聴力が回復したこと、家族を多少なりとも安心させられたこと、また、日常生活や職業生活の選択の幅が広がるなど、利点に繋がったことも多かったからです。
手術を執刀してくださった主治医、人工内耳の調整を担当してくださっている言語聴覚士、入院生活を支えてくださった看護師の方々、人工内耳の手術を負担なく受けられた日本の社会保障制度、手術までの不安な日々を支えてくれた家族や友人達には感謝してもしきれません。今この場を借りて感謝の気持ちを伝えたいと思います。
人工内耳で聞いた「ありがとう」の言葉
人工内耳の手術をしたからと言って、直後から聞こえるようになるというものではありません。術後に、人工内耳という新しい人工臓器を使用して音を聞き取るリハビリが必要になります。
例えば、本の内容を読み上げるオーディオブックを毎日聞き、脳の聴覚野を活性化させ、脳に正しく音を認識させる必要があります。私は元々聞こえていたので、聞こえの戻り方が比較的早かったようですが、それでも、術後の数カ月は奇妙な機械音が聞えてくるだけで、話し言葉を正しく認識することはできませんでした。
そんなある日のことです。お店で買い物を済ませ、店を出ようと出口に向かっている時に背後から店員さんの「ありがとうございました!」という声が耳に飛び込んできたのでした。
聞こえなかった時も、私はたくさんの「ありがとう」をもらいました。時に筆談してもらい、時に手話で、時に私が相手の口元を読み取る方法で。どの「ありがとう」も心からうれしく思う気持ちに偽りはありません。しかし、相手が「ありがとう」って言ってくれているんだなと一旦、頭で考えるような間接的な受け止め方でした。
店員さんの「ありがとう」は違いました。声が直接心に届くような不思議な感覚でした。人工内耳の手術後、初めて聞いた言葉が「ありがとう」で良かったなと思っています。
最後に
ここまでお読みいただいた皆さま、いかがでしたか?
この記事では中途失聴者でユニバーサルマナーの講師である私が人工内耳の手術を受けた経緯を率直にお伝えしました。
ユニバーサルマナー検定では「障害は人ではなく、環境にある」とお伝えしています。この記事をお読みいただいた皆さまには、障害者の「社会的障壁とは何か?」少しでも理解していただけたのではないでしょうか。
障害者をはじめとする社会的マイノリティの生活環境の改善はまだまだ途上です。今後も仕事を通じて、環境、情報、意識のバリア解消に取り組んでいきたいと考えています。
最後までお読みいただき、ありがとうございました!
また、次の記事でお会いしましょう。