全盲の講師・原口に、視覚障害がある人の「外出」「通勤」についてインタビューしました。

社会には「障害のある方に対してサポートしたい気持ちはあるが、実際にそのような方を街で見かけた場合に勇気が出ない」と思う人たちが多くいると思います。

そんな方にオススメの記事ですので、ぜひ最後までご覧ください!

インタビュイー:原口淳


写真 原口

原口さんは1人で通勤されているとのことですが、どのように道順を覚えたのですか?

私の場合、初めての道順を1人で覚えることはできません。会社の通勤ルートを覚えた時は、休みの日に会社の同僚にサポートしてもらいながら2,3往復しました。誘導してもらいながら何度か往復し、その際にまず「足元の感覚」を覚えました。

「足元の感覚」とは、文字通り足で感じることです。ここは凸凹している、少し坂があるとか。見える人が看板などを目印にするように、僕も歩きながら幾つか目印を見つけ「道路の凸凹が激しい所を過ぎたら右に曲がる」と覚えるのです。

そして、最後に会社の同僚に後ろを歩いてもらいながら、1人で歩き、事前に見つけた目印をきちんと抑えられているか確認します。問題がなければ、次からその道を1人で歩くことができます。

目印がわかれば1人で歩けるんですね!例外などはありますか? 

私たち視覚障害のある人は、気候・周囲の環境の変化に弱く、それは1つの特徴とも言えます。目印を覚えたいつも通りのルートを歩くのは基本的に問題ありませんが、雨や風が強い日、セミの声が大きい夏の日など、いつもだったら聞こえる音が聞こえなくなってしまう状況になるととても大変です。

皆さんには「今日は雨だから、視覚障害のある方にとって音が聞こえない状況になりそうだな」と思った時に、少しでも声をかけてくれたり、誘導してくれると本当にありがたいです。僕もそうですが、多くの視覚障害のある方もきっと助かると思います。

他にも原口さんがうれしいと思う対応やお声がけはありますか?

僕は、無理のない範囲で声をかけてくれるととてもうれしいです。

通勤中にたまにあるのですが、ふと声かけられて「いつも見かけているけどなかなか声をかけられなくて……。またお声がけしますね!」って言ってくれると、今まで僕のことをずっと気にしてくれていたのかなってすごくありがたい気持ちになります。

声をかけてくれて、少しの会話を交わす、そのように顔見知りの方が増えるとうれしいです。

原口さんが記憶に残っているお声がけやサポートはありますか?

あげればキリがないぐらいありますが、人って毎日会っていたらだんだん仲良くなるんだって感じたことがありました。ずっと通勤で乗っていた電車の同じ車両に、私立の小学校の子どもたちが3人ぐらい乗っていて、自然と顔見知りになってたんですよね。

最初は、席を譲ってもらっていたんですけど、子どもたちと他愛もない会話をしているうちにだんだん仲良くなってきて、ある日小学生たちが「席1つ空いてるけど、どうする?みんなでジャンケンしよう!」と言ったのが印象的でした。

最初は私に対して何かしないと!と思っていた子どもたちが「目が見えないだけで、僕たちと一緒。目が見えないからと言って特別扱いはいらないんだ」と自然に私は座らなくても大丈夫だということを理解してくれて、とてもうれしかったです。

出張を多くされているとのことですが、新しい場所に1人でいく際にはどうされていますか? 

全国各地にいる「顔見知り」の人たちにサポートしてもらっています!

出張が多い分新幹線をよく利用するので、駅員さんにお願いすることが多いです。いつも乗る電車だと1人で乗り降りできるのですが、出張の時は新幹線の指定席を取っているので、駅員さんに席まで誘導してもらっています。

名前も知らない方々ですが、声を聞くと「今日はこの方だな」とわかるので、「顔見知り」ならぬ「声聞き知り」だと思っています(笑)。どの方も、毎回お会いすると話しかけてくれたり、「いってらっしゃい」や「おかえり」とも言ってくれたりします。

これはサポートが必要な私だからこその経験だと思うので、とても幸せなことだと感じています。

写真 白杖を持っている人を手引きしている様子

最後に、お声がけできずに悩んでいる人はどうしたらいいでしょうか?

ほんのちょっとした一言だけでもかけてくれると、その会話からお願いを頼みやすくなったり、その一言で誰かが近くにいるんだという安心感に繋がっています。

例えばですが、エレベーターに乗れたとしても、自分が降りるタイミングが掴みにくいです。その時に「扉開けているので、先どうぞ!」と一言かけてもらうと、ありがたいし、そこで会話が始まると「改札はどの方向にありますか」などその後自分が不安に思っているちょっとした質問がしやすくなります。

他にも、音が鳴らない信号だと渡りにくいので、その時に「青ですよ!渡りましょう。」「今、赤信号なので止まりましょう!」と一言かけてくれると非常に助かります。

今言ったような単純な会話や一言だけでも声をかけてくれると、誰かが近くにいる安心感にも繋がるし、きっかけがあるだけで救われる人がたくさんいると思います。

おわりに

今回のインタビューを通して「ちょっとした一言でも、障害がある方へのサポートになる」ということにあらためて気付くことができました。

普段の日もそうですが、雨や風の日など耳から得られる情報が少ない日は特に、「見える」情報を提供することで視覚障害のある方にとって、よりサポートになるということが分かったので、そのことを踏まえて行動したいと感じました。


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