こんにちは。講師の薄葉です。ユニバーサルマナー検定の講義は、車いすユーザーや視覚障害のある人など、さまざまな障害のある講師が担当しています。
今日は聴覚障害がある薄葉と視覚障害がある原口の2人で、ユニバーサルデザインのトレードオフ※ の課題と誰もが使いやすい設備やサービスについてお伝えします。
※両立できない関係性のこと
(例:散財と貯蓄、●●な人は使いやすいけど■■な人には使いにくい など)
目次
・最初に
・視覚障害のある人が使いにくいユニバーサルデザインって?
・駅の券売機は視覚障害のある人も操作しやすい
・聴覚障害のある人は大助かり!のセルフレジ
・使えない時は人に頼る!
・店舗のインターフォンはどこに繋がっている?
最初に
講師として同じ部署で長年一緒にお仕事していますが、対談は初めてですね。今日お話しするのを楽しみにしていました。よろしくお願いします!
普段薄葉さんとお話しする機会は多いですが、対談は初めてですよね。こちらこそよろしくお願いします!
今日のテーマはユニバーサルデザインのトレードオフです。日常生活で、例えば、聴覚障害のある人は助かっている一方で、視覚障害のある人が使いにくい設備やサービスについて考えていきます。
視覚障害のある人が使いにくいユニバーサルデザインって?
聴覚障害のある人にとっては使いやすく、視覚障害のある人には使いにくい設備の一例として真っ先に浮かんだのは、病院やお店に取り入れられている“タッチパネル式のセルフレジ”です。モニター上のアイコンを操作するセルフレジは対人コミュニケーションの必要がないため聴覚障害のある人にとっては便利というご意見がある一方で、僕のように視覚障害のある人、特に全く見えていない全盲の人には使えないことがあります。
なるほど~。それで言うなら“駅の切符売り場の発券機”はどうでしょうか。同様のモニター操作が必要ですよね?
駅の券売機は視覚障害のある人も操作しやすい
駅の発券機も同様ですね。ただ、 タッチパネルには操作を指示してくれる音声案内が付いていたり、点字付きのボタンが付いていたりするので、視覚障害のある人が1人で操作できることが多いです。また、最近の改札口は交通系ICカードやスマートフォンの決済アプリを使用して通過できるので、さほど困った経験はありません。
確かに!鉄道会社によっては“点字の料金表”も設置されていて便利ですよね。あらためて考えてみると、コロナ禍で非接触のサービスが増え、コンビニやスーパーなどでもセルフレジが加速的に普及しましたよね。ほかにも、飲食店の各テーブルに設置されたタブレットで注文する無人オーダーシステムも普及しましたね。
そうそう。ちなみにコンビニのセルフレジでは、自分でバーコードリーダーに読み取らせる苦労があるなど、視覚障害のある人が1人で全ての操作を完了できるシステムはまだ少ないのですが、金額を読み上げてくれる機能は付いていることが多いです。また、スーパーでレジ担当者が商品のバーコード読み取りを行い、支払いを指定されたレジで行う“セミ・セルフレジ”システムがありますが、あのレジにも金額を読み上げてくれる音声案内が付いていることがあります。
コンビニやスーパーのセルフレジは金額を読み上げてくれることが多いのですね。というと、課題は……?
病院や一部の店舗にあるタッチパネル式のセルフレジですね。
聴覚障害のある人は大助かり!のセルフレジ
セルフレジは聴覚障害のある人にとっては音声コミュニケーションの課題を解決してくれて非常にありがたいサービスですが……。視覚障害のある人にとっては使いにくいのですね。うーん、悩ましい。
そうなんです!特に全盲の僕にとって、突起のない画面のアイコンを探し当てて操作するのは至難の業です。そのため読み上げ機能が付いていることが必須条件になります。
では、セルフレジが使用できない時はどのようにお会計されているのでしょうか?
使えない時は人に頼る!
店員さんや一緒にいる誰かにサポートしてもらいます。コンビニ以外でも、衣料服量販店での買い物は家族や友人と買い物に行くことが多いです。似合う色のアドバイスをしてくれる人が一緒だと心強いからです。
服に関するプロとはいえ、原口さんと初対面の店員さんより、普段から原口さんの個性をよく知る家族や友人の“この色が似合っているよ”というアドバイスの方が説得力がありますね。
そうなんです。なので、通常は誰かと一緒に買い物に行くことが多いのですが、急な買い物のときは1人で行きます。お店によっては入り口付近にインターフォンが付いているので、店員さんに来てもらってアテンドしてもらいます。
店舗のインターフォンはどこに繋がっている?
ちなみに、あの入り口に付いているインターフォンはどこに繋がっているのでしょうか?
ほとんどが警備員室に繋がっています。僕から連絡を受けた警備員の方が売り場の店員さんに内線で連絡し、引き継いだ店員さんが入り口まで迎えに来てくれます。
なるほど~、そういう手順なのですね。知りませんでした。となると、店舗によっては、障害のあるお客さまが来店された時のマニュアルが整備されていそうですね。
そうだと思います。ただ、障害者対応の接客マニュアルに不安を覚えることもあるんです。
前編はここまでです!
原口が接客マニュアルに不安を覚えている理由とは……?
後編は接客マニュアルの懸念点、情報保障の理想などをお伝えします!