講師の原口です。

私は子供のころから好奇心旺盛でたくさんのことに挑戦してきました。それは、小さいころから両親が目の見えない私に対して「これは危ないからやめときなさい」「これは目が見えないとできない」などと言わず、どんなことでもやらせてくれたおかげだと思っています。自分がおもしろそうと思ったものは『どんなことでもまずやってみる』というスタンスで生きてきました。

今回は、先日体験したアックススローイングについてお話しします。

 

斧を…投げる…?

ある日、同僚から「アックススローイングって知ってる?」と聞かれました。

全く知らないと答えると「斧を投げる競技だよ」と。私の中でさらに疑問が膨らみました。斧を投げる?全く想像がつきませんでした。

想像がつかないとなると私の好奇心は大きくなります。同僚からやってみないかと誘われて即OKしました。

そして体験日までにアックススローイングについてインターネットで検索。
※私は画面の情報を音声で読み上げてくれるスクリーンリーダーを使用し、インターネットを閲覧しています。

アックススローイングは、点数が書かれた的に斧を投げて、的に刺すという、基本的にはダーツと同じようなルールで行うのだということが分かりました。

ただ、どうやって斧を投げるのか、全く想像ができませんでした。どんな風にやるのか、事前に分からなければ実際やってみて知ればいい!楽しいかどうかもやってみたら分かる!
昔からこんな感じでいろんなことに挑戦してきたので、今回も同じ気持ちで当日を迎えました。

 

当日受けた説明

当日は会社の仲間4人でアックススローイングができるお店に行きました。
※事前に全盲の人が来店する旨を伝え、承諾いただいています。

体験を行う前に『どこから、どれくらいの距離を、どんな的に向かって投げるのか』を実際に歩いて、的を触って確認しました。言葉での説明はもちろん大切なのですが、実際に自分の足で歩き、手で触って確認するのが1番分かりやすいのです。

的に触れると、斧が刺さったり当たったりしてできたであろう傷がたくさんあり、ここに斧を投げて刺すのだとリアルに感じられました。それと同時に、斧を的に当てることはできたとしてもうまく刺さるのだろうかという疑問もわいてきました。

続いて、スタッフの方から注意事項や斧の投げ方の説明をしていただくことになりました。具体的に投げ方などを説明していただいたのでとても分かりやすかったのですが、頭で理解できたとしてもそれを実践できるのかはまた話が違います。

言葉で伝えていただいて頭の中で想像した形を体で表現してみる。やはり少し形が違うので、言葉や私自身の体を触ってもらって修正してもらう。


直後にテキストあり
※斧の角度を調整する様子


これを繰り返しながら、投げ方を覚えていきます。目で見ることができない分、具体的に言葉で伝えることと、手取り足取りで正しい形を教えてもらうというのが、私にとって『初めて体験する動きを覚える方法』なのです。

スタッフの方や同僚に、たくさんアドバイスをいただきながらいざ挑戦です!!

 

あっちこっちに飛んでいく斧

もちろん最初はうまくいくはずもなく、投げた斧がいろんなところに飛んでいきました。横や上の金網にあたって、すごく大きな音がしていました(笑)。


直後にテキストあり
※肘を支えて安定させる原口


ただ、この『音がした』というのも私にとっては重要な情報でした。投げた後に、どっちの方向に行ったというのは言葉で伝えてもらえることはとても重要なのですが、金網に当たった音や、的の下に当たって斧が落ちた音などの、音でのフィードバックがあることにより、「全くダメだな」「これは良かったな」など、自分自身で判断することができるのです。

何度も繰り返すうちに、投げ方も安定し、斧が的に近づいてきました。ここからがまた大変で、的には当たるようになったもののなかなか刺さりません。ただ投げるだけでなく、手首をうまく使って、斧の先がしっかり的に当たらなければいけません。ここまで来たらあとは回数を重ねるだけです。何とか1回は的に刺したいという一心で投げ続けました。

何回投げたのか分かりませんが、継続は力なり!!
ついにその時がやってきました!!!

斧を投げてどんと的に当たる音。いつもなら
すぐ後にカランと下に落ちる音がするのですが、その音がない!!

「あれ?もしかして」と思った瞬間に、同僚の喜ぶ声が聞こえてきて、ついに的に刺さったことが分かりました。しかも的のど真ん中に刺さったとのこと。実際に刺さった場所を確認して、初めてうれしさがこみ上げてきました。

このようにして、私のアックススローイング初体験は最高の形で終わったのでした。

 

■挑戦するということ

私はいつも初めてのことをするときは、たくさんの人に教えてもらいながら行います。見えない分、時間はかかりますし、なかなかうまくいかないことも多いです。

でも、何度も繰り返しやって初めて成功したときは、自分だけでなく一緒に教えてくれた周りの人たちも喜んでくれる。それが何よりも嬉しく、また新たなことに挑戦してみようという気持ちになっているのです。


※音量は少し大きめなので再生時はご注意ください