講師の原口です。

私は生まれつき目が見えないため、小さいころから点字を使用しています。今回は私がどのように点字を覚えたのか、また学生時代の点字にまつわる思い出などをお話ししたいと思います。

 

点字との出会い

よく「どのように点字を覚えたのですか?」と聞かれることがあります。私の場合、初めて点字にふれたときの記憶や、読み書きの練習をした記憶が全くありません。物心着いた頃には、当たり前に点字を読み書きしていました。
点字を読む人私は小学校から高校までを盲学校で過ごしてきましたが、小学校に入学する前に週に何日か盲学校に行き、点字の練習などを行っていたそうです。その当時の記憶は全くないのですが、盲学校の先生から私と一緒に母親も点字を覚えるよう言われ、一緒に練習をしていたそうです。ただ、私が覚えるペースがとても早く、母親はついてこれず、早々に点字の習得を断念したのでした。

 

メリット……?(笑)

なので、私はこれまで、学校の宿題を母親にチェックされるという経験をしたことが1度もありません。

また、点字にはひらがなやカタカナ、漢字といったものがなく、すべて『かな』で表記するため、50音の読み書きを覚えれば基本的にどんな本でも読めるようになります。小学生が苦労して行う漢字ドリルなどもないため、目の見える兄弟たちにとてもうらやましがられていました。ただ、その分計算ドリルや音読、作文といった宿題がたくさん出ていた気がします(笑)。

他にも、点字は指で読むので、どんな体勢でも本が読めるというメリットもあると私は感じています。中学生のころは、布団に入って寝たままで試験勉強を良くしていました。ただ、本は読めるものの、横になった状態だと睡魔が襲ってきて、寝落ちしてしまい、結果的にほとんど試験勉強ができずにテストを受けて、散々な結果になってしまったという苦い経験もたくさんしました(笑)。

このように私は小さいころから自然に点字を覚え、使用しています。

 

うらやましかったこと

点字を使用していて良かったなと思うことはたくさんありますが、一つだけ学生時代に墨字(点字に対して、一般の文字のことを言います)を使用している人がうらやましいと思ったことがあります。

それは、点字の本はとても大きく重いということです。1冊の墨字の本を点字にすると3倍ほどの量になるのです。なので、小学生のころから私は毎日大量の荷物をもって登下校していました。ランドセルは使っていましたが、詰められる
点字の本はせいぜい2,3冊。入りきらない教科書は手提げかばんに入れて、学校に持っていくという状態でした。さらに、体育がある日などはそれに加えて、体操服を入れた手提げ袋が追加されるという有様でした。
重そうなランドセルを背負っている人
ランドセルはいつもパンパンで、ふたも閉まらない状態で歩いていました。兄弟たちが身軽に登下校しているのを見て、「墨字の教科書は薄くて良いなー」といつもうらやましく思っていました。荷物が多く登下校が大変だったものの、そのおかげで体力がついたと思いますし、今となってはそれもとても良い思い出になっています。

 

点字への想い

現在は情報機器の発達によって、パソコンの画面を音声で読み上げるスクリーンリーダーや、ピンが上下に動いて点字を表示させる点字ディスプレイというものがあり、重い点字の本を持ち歩くことはほとんどなくなりました。

また、視覚障害者の中でも日常的に点字を使用している人は、減少してきているとも言われています。学生時代に比べると点字を使う機会は減っているものの、小さいころから当たり前に点字を使用してきた私にとっては、点字が自分自身の「文字」だと思っています。そんな点字をこれからも大切にしていきたいと思いますし、たくさんの方に伝えていきたいです。