障害のある方がどのように生活をしているのか、生活の中でどのような工夫をしているのか、素朴な疑問を持ったことがある方も多いはずです。日常生活について、普段はなかなか聞く機会がないテーマについて、皆さんが疑問に思っていそうなことを、ユニバーサルマナー検定の講師に質問してみました!今回は聴覚障害のある講師・薄葉に、自宅での生活についてインタビューしました!
★別記事「【聴覚障害者のライフハック】火災報知器にはどうやって気づくの?」はこちら
目次
・自宅で困ることはチャイムやアラームなどの「音声情報の習得」
・チャイムはスマホで確認!?
・スマートフォンで犬の鳴き声も探知できる時代に!
・昔の人は「尿意」がアラームの代わりだった!?
・最新の技術や製品だけではカバーできないこともある
・最後に
話す人・聞く人
話す人
株式会社ミライロ ビジネスソリューション部 ユニバーサルマナーチーム 講師
薄葉ゆきえ
…聴覚障害のある講師として、「外見からは見えにくい障害」に対する理解を中心に、全国の企業・自治体・学校などで講演を行う。
聞く人
株式会社ミライロ 経営企画部 広報担当
神保さほり
自宅で困ることはチャイムやアラームなどの「音声情報の習得」
今日は、聴覚障害のある薄葉さんの日常生活をテーマにインタビューさせてください。皆さんきっと、耳が聞こえない、聞こえにくい聴覚障害のある方が、日常生活でどのような困りごとがあって、どんな工夫をしているのか、気になっていると思うので!
はい、よろしくお願いします。
早速なんですが、ご自宅での様子や工夫についてお伺いしたいと思います。聴覚障害のある方が、自宅で過ごす上で、一番不便だと感じることは何ですか?
聞こえないと、音声情報の取得に困ることが多いですね。例えば、お客さんが来た時のチャイムの音や電子レンジ・炊飯器・目覚まし時計などのアラーム音が聞こえないとか、火災報知器の音や町内の防災放送がわからないなどの困りごとがあります。
聞こえていると意識していないですが、改めて考えてみると、日常生活には音の情報が溢れていますよね。
そうですね。例えば、非常時の音の情報がわからないといざという時に命を守ることが難しくなりますし、音声情報がわからないと、何かを判断するための手掛かりが手に入らなくて困ることが多いです。
チャイムはスマホで確認!?
なるほど。では皆さんが一番想像しやすそうなことから詳しく聞いてみましょう!来客時のチャイムはどのように対応されているんですか?
玄関に外付けの機器を設置しています。通常の玄関のチャイムと同じように、誰かが機器のボタンを押すと、私のスマートフォンに通知が来るシステムです。インターフォンと同じように外付けの機器にカメラが付いていて、来客の様子もスマートフォンから確認できます。スマートフォンのマイクから、来客に声で応答もできるんですよ。
そのような機械があるのですね!便利ですね!この機械はもともと聴覚障害のある方に向けて作られたものなのでしょうか?
いいえ、もともとはカメラ付きのインターフォンがない家庭やベランダで洗濯物を干していてもチャイムに気が付くことができるなど、一般の方にとって便利な機械として販売されているものです!
それが薄葉さんにとっても使いやすかった、ということなんですね!
はい。スマートフォンには通知が来たときに振動や光で知らせてくれる機能が搭載されています。そのため、こうした機械と連動したアプリを使うだけで、振動や光で来客が来たことを把握できるという訳なんです。
なるほど。まさにユニバーサルデザインですね!聴覚障害のある方に向けて作られた製品ではなく、家事をする人やカメラがなくて困っていた人も欲しくなるものということですね!
そうなんです!一般的に販売されているものなので価格もお手頃ですし、インターネットなどで購入できて便利です!
スマートフォンで犬の鳴き声も探知できる時代に!
なるほど…。技術が進歩したからこそですね!
はい。あとは、スマートフォンの中にはサウンド認識という便利な機能が搭載されている機種があります。この機能を設定しておくと、例えば、チャイムの音が鳴った時に、スマートフォンが音を認識して、“ドアベル”というように、スマートフォンの画面に文字で表示されます。この機能が搭載されているスマートフォンのアクセシビリティという画面から、設定できますよ。
そんな機能もあったんですね!知りませんでした。今、確認したら、“イヌ”ヤ“ネコ”という項目もありますね。あとは、“水の出しっぱなし”とかも!
便利ですよね。音声認識の技術は今後も、どんどん進歩していくと思います。
そうですね。電子レンジや炊飯器などの家電のアラーム音も音声認識で対応できそうですね。
はい。他にも、電子レンジなどの家電そのものにランプが付いていて、点滅するものもありますよね。冷蔵庫も開けっ放しになっている時に、ランプが点灯して教えてくれるとか。 あとは、家電にそうした機能が付いていなくても、設定時間が来ると、ランプが点灯するタイプのキッチンタイマーがありますから、料理の際には、それで代用する方法もあります。もちろん、さきほどから話に挙がっているスマートフォンのタイマーを使うこともできますが…!
昔の人は「尿意」がアラームの代わりだった!?
なるほど…。家電もいろいろと進化しているんですね!薄葉さんは、以前、目覚まし時計も振動式のタイプを使用しているとおっしゃっていましたが、今も同じ方法で起きられていますか?
はい。今も枕の下に入れて、起きる時間にブルブル振動するタイプの時計を使用しています。他にも、腕時計式やシーツの下に敷いておくマットレスのようなタイプの振動式目覚まし時計もあります。
へえ~、いろいろ出ているんですね!その他にも最近はスマートフォンと連動するタイプの腕時計を持っている方も多いと思うので、連動させて振動で起こしてもらうこともできそうですね!
そうですね。他にも、使い終わった携帯電話を捨てずに取っておき、アラーム機能をバイブレーションに設定して使用することもできます。現行で使用しているスマートフォンを使用すると、寝ている間に通知が来てしまって、その振動で起きてしまうこともありますから。
なるほど、使い終わったものも利用できるという訳なんですね!ちなみに、振動式時計の効果のほどはいかがですか?ちゃんと起きられますか?(笑)
はい。振動の強さは好みで調整できますが、私は、振動の強さをMAXで設定しているので、お陰さまで、今まで起きられなかったことは一度もないですね(笑)。仕事柄、遅刻は厳禁なので、とても助かっています。
音よりも直接体に届くので、振動タイプは寝坊が防げそうですね(笑)。そうやって考えると、振動式の目覚まし時計がなかった時代には、聴覚障害のある方は起きるのが大変だったでしょうね。同居しているご家族に起こしてもらうとかしか、方法がなさそうな気がしました。
伝え聞くところによると、振動式目覚まし時計がない時代には、就寝前にお水をたくさん飲んでから寝ていたそうです。 膀胱がいっぱいになった時の尿意で目が覚めるように工夫していたそうです。
え!そんな工夫をされていたんですね!でも、それだと夜中に目が覚めてしまったりしないのでしょうか?
したでしょうね。そうしたら、また水を飲んで寝るのだと思います。または、起きる時間に合わせて、飲む水の量を調節するなどしていたのではないでしょうか。
それはすごいですね…!でもそれを聞くとなおさら、今はいろんな選択肢があって恵まれていますね!
はい、本当に最近の機械や技術の進歩には、感謝しかありません! あとは、これも聴覚障害のある方に向けて作られた機械ではないのですが、最近では、起きる時間が来るとカーテンを自動で開けてくれる機器があったり、起きる時間にフラッシュランプが明滅して、寝ていても、瞼に光を感じて起きられる点滅式目覚まし時計などもあったりしますよね。
光で起こしてくれるアラームは聞いたことがあります!確かに、アラームの大きな音で起きるより、光で起きる方が目覚めがよさそうですね。自分用に探してみようかな(笑)。
ぜひ!聴覚障害のある方だけでなく、聞こえる人も使っていますよ。勿論、光だけではなく、アラーム音も出ますから、お好みで設定していただくといいかなって思います。
最新の技術や製品だけではカバーできないこともある
今回は薄葉さんの日常生活についていろいろとお話を伺いましたが、最後にこの記事を読んでくださっている方にお伝えしたいことはありますか?
今回ご紹介したのは、「あくまでも私の自宅においての工夫」ということを忘れないでいただきたいです。自宅という空間だからこそ、自分に合った家電製品がたくさんあって、不自由なく生活することができていますが、外出先ではまだまだ音声情報の取得に困ることがあります。
そうですよね。いくら技術の進歩で便利な製品がたくさんあったとしても、それらを常に持ち歩ける訳ではないですもんね……。
そうなんです。通勤中の電車の中や遊びに行った遊園地などでは、アナウンスの内容が聞き取れずに不安になることもあります。なのでぜひ皆さんには、そうした場面において聴覚障害のある方は困ることがあるということを知っていただけると嬉しいです。
そうですね!ちょっと知っているだけで「もしかしてあの人困っているかもしれない」ということに気づくことができますもんね!今回のこのインタビューが、少しでも新たな気づきになれば嬉しいです。薄葉さん、今日はありがとうございました!
ありがとうございました!
最後に
今回は聴覚障害のある薄葉の日常生活についてご紹介しました。いかがでしたか?
実際に話を聞いてみないとわからなかった、たくさんの工夫がされていましたね。特に最近は技術が進歩し、さまざまな機械で聴覚障害のある方の生活がより便利になっていると感じました。
一方で、最後に薄葉からもあったように、自宅と外出先では困ることや工夫も変わってきます。仕事先や外出先についても今度インタビューする予定なので、ぜひそちらもご一読ください!
★別記事「【聴覚障害者のライフハック】火災報知器にはどうやって気づくの?」はこちら