この記事では、弊社の視覚障害のある社員の声をもとに、災害時における困り事や、周りの人が出来るサポート、また災害が起こる前に対策できることなどについてご紹介します。
個人の特性や状況によって変わりますが、目が見えないと、テレビやラジオなどで大まかな情報は分かっても、目の前で起きていることがわからない。避難しようとしても道路の状況や適切なルートが分からないことがあります。これらは一部の例ですが、いずれも一人でいると逃げ遅れに繋がることや、次の行動が取りにくいことがあります。つまり、状況に応じて、周囲の方のサポートが必要となるのです。
家族や同居人が一緒にいる場合は避難ができますが、一人暮らしの場合は、周囲に頼ることができる人がいないと、さらなる事態の悪化を招くこともあります。
もし、お知り合いで障害のある方が近くにお住まいの場合は、お声かけやサポートできることがないか確認いただけると、次の行動の取りやすさや安心に繋がります。
実際に、弊社の視覚障害のある社員は、一人で屋内にいる際に大きな地震に遭遇したことがあります。室内で何かが倒れた音や、聞きなじみのない音が響いているのは分かりますが、見えないためどこで何が起きているのか分からず、非常に不安を覚えたそうです。そんな時、知り合いから連絡があり、「私が着くまで動かないで」と言ってもらえたことで一安心できたそうです。近くにお住まいでなくても、お知り合いが災害発生地域にいる場合、メールや電話での安否確認があるだけでも安心度はぐっと高まります。
避難中は、周囲の状況が見えないと、倒壊した建物や浸水などで道が阻まれていたとしても、それに気づくことが難しくなります。また、避難所までの道を知っていても、普段の周辺状況や音・匂いなどで空間を把握されている場合は、いつもと違う状況だと方向感覚を失ってしまうこともあります。視覚障害のある方以外にも、一人では移動が困難な高齢者、耳からの情報が入らず困っている方、パニックを起こされている方など、それぞれの特性や状況によって困りごとは様々です。
お知り合いの方以外でも、視覚障害のある方に限らず、移動が困難と思われる方を見かけた際には、声をかけあったり一緒に避難をいただけると安全に避難所までたどり着くことができます。
災害が起きてからではなく、起きる前に準備しておくと、トラブルを最小限に抑えられることもあります。視覚障害のある当事者自身が出来ることとして、例えば以下のような工夫が挙げられます。
障害の有無に関係のない基本的な対策も多いですが、視覚障害のある方にとっては特に重要な対策です。目が見えないと割れ物や倒れたものに気づかないため、誤って踏んだりぶつかったりしないような対策が必要です。
また、音声情報だけが頼りになるので、ラジオや携帯電話をすぐに・継続して使える準備が必要です。ここで挙げているものは一部ですが、もし使えるものがあれば是非参考にしてみてください。
そしてもう一つ、災害が起きる前に確認しておきたいのが、避難所や浸水情報などが記載されている防災マップです。浸水情報などは、マップ内で危険度が色付けされていることも多いですが、視覚障害のある方は、色だけでは自分の住んでいる地域がどれほど危険な場所なのかが分かりません。
事前にお知り合いなどにマップの情報を伝達してもらうか、自治体によっては音声付きのマップを用意されている場合もあるので、そういったもので事前に情報を整理されておくことをお勧めします。
今回は視覚障害のある方を中心に、災害時の困り事などについて紹介しました。実際には、聴覚障害のある方、車いすに乗られている方、パニック状態の方、お年寄りの方、ケガをされて歩行が困難な方など、災害時には一人での避難が難しくなる可能性のある方は多岐にわたります。
もちろん、優先すべきはご自身の命を守ることですので、ご自身の安全が確保できる場合には、是非お声かけやサポートなどのアクションを取っていただけると、お互いに安心することができます。
後編はこちら