皆さん、こんにちは!ミライです!
今回は聴覚障害のある講師・薄葉さんに「人工内耳をつけて、音のある世界に戻って気づいたこと」を聞きました!障害のない人もぜひ読んでください♪

 

登場人物

 

ココロとミライのイラスト
ミライ(右)

薄葉
ユニバーサルマナー講師 薄葉ゆきえ(聴覚障害、人工内耳装着者)

 

目次


最初に
聞こえない人は外見で声をイメージする?
人工内耳装着者にとって高い音はどんな聞こえ方?
人工内耳装着者の防音対策とは?
誰もが聞き取りやすい話し方の実践は、ユニバーサルマナー

 

最初に


ミライ
薄葉さんは人工内耳の手術をして、どれくらい経つんだっけ?

薄葉
かれこれ、1年と4カ月くらいかな。

ミライ
人工内耳の手術を受ける前は10年くらい全く人の声が聞こえなかったんだよね?
薄葉さんに聞いてみたかったことがあるんだ。声って一人ひとり違うでしょ?人工内耳を使って声を聞いてみたら、人の印象は変わった?

薄葉
すごく良い質問!言われてみれば、声で印象が変わった人はいたよ。

 

聞こえない人は外見で声をイメージする?


薄葉
聴者であっても、例えば漫画を見ていて 「このキャラクターはこんな声かな」と想像したりするよね?

ミライ
ミライは想像する!そしてアニメ化したときに「自分の想像とは違ったな~」と思うことがある……。もちろん想像と違ったからっておもしろくないわけではないけどね~。

薄葉
だよね!私も聞こえていたときに感じていたんだ~。そして今回人工内耳を装着して久しぶりに人と話してみて、同じ現象が起こったの。すごく好みの声質の人だと、好印象に繋がったことがあったんだ~。


ミライ
確かに、好みの声の人の話にはつい耳を傾けてしまうことがあるかも……。

薄葉
高いにしても低いにしても、好みの声ってあるよね!それと、話し方による印象の変化もあったかな。実は、人工内耳や補聴器などの補聴機器と相性の良い声質や話し方というものがあるんだよね。もちろん、聴覚障害のある人もさまざまだから一概には言えないんだけど、私の場合は、高すぎない声の方が心地良く感じるし、ゆっくり、ハキハキ話してくれる人の話し方は聞き取りやすいから、そういう話し方の人に対して「意識してくれてるのかな」と好印象を持つことが多いよ。

 

人工内耳装着者にとって高い音はどんな聞こえ方?


ミライ
薄葉さんは、人工内耳のリハビリ中だよね。今はまだ機械のような音が響いて聞こえるって言っていたけど、高い声はキンキンと響いて耳障りのように聞こえてしまうイメージで合ってる?

薄葉
私の場合はそうだね。声だけではなく、例えば、車の急ブレーキの音やクラクション、家電のアラーム音や機械の警報音、あとは、赤ちゃんの泣き声や小さい子どもの叫ぶ声もキンキンと響いて聞こえてしまう。季節的なことだと、セミの鳴き声も響くように聞こえるな。

ミライ
セミの鳴き声については、全盲の講師・原口さんも「周囲の音が聞こえなくなるから困る」って以前話していたね。薄葉さんも夏はセミの鳴き声で苦労するんだね。
ブログ『視覚障害者の夏の意外な天敵とは!?~日常から気づく、外を歩く際のポイント~』

薄葉
私が装着している人工内耳は、アプリで音の聞こえ方、例えば、音の感度や大きさを調整できるの。だから多少は不快感を軽減できるんだけど、やっぱり限界はあるみたい。

 

人工内耳装着者の防音対策とは?


ミライ
高い音は多くの場合、突発的に発生することが多いよね。びっくりして叫んだり、何かの通知音だったり……。もしかしたら人工内耳のノイズキャンセリング機能の作動が間に合わなくて、音が頭に響いてしまっているんじゃない?

薄葉
機械の専門家ではないけれど、それはあるかもしれないね。そもそも高い音は、人に気づいてもらいやすいよう存在しているのかもしれないし……。例えば、警報音や赤ちゃんの泣き声が自然界の音に紛れてしまう音域だったら、聞いた人は聞き流してしまうから、注意喚起の目的を果たせないじゃない?

ミライ
たしかに!すぐに気づかなくてはいけない音声は、あえて高い音になっているのかもしれないね。赤ちゃんや子どもの声で思い出したけど、高齢者が赤ちゃんや小さい子どもの声をうるさく感じてしまって、クレームが出ることがあるみたいけど、もしかしたら、その高齢者は補聴器を装着していて、薄葉さんと同じような課題があるのかもしれないね。

薄葉
そうかもしれないね。とはいえ、一般的に赤ちゃんは泣くことが自然だし、小さい子どもも突然叫ぶことはよくあるわけだから、仕方ないよね。そういう時は、相手の立場に立って考えるユニバーサルマナーの考え方が大事だよね。

ミライ
同感!行動が抑制しにくい赤ちゃんや子どもに理解を示して、大人である高齢者が我慢する方が適切な気がする。とはいえ、高齢者も加齢とともに感情の抑制が難しくなる特性がある人もいるから、周囲の人が間に入ってうまく環境調整する必要があるかもね。ところで、薄葉さんは子どもの声がうるさいと感じた時はどのように対処しているの?

薄葉
人工内耳を外してしまうかな。実は、今住んでいる自宅の近くに託児所や保育園、小学校が4か所もあって、子どもの声が日常的に聞こえてくる環境でリモートワークをしているんだよね。とはいっても、苦情を言うのは違うなって個人的に考えているよ。だから、こちらができる対策として、音が気になる時は人工内耳を外してしまうの。

ミライ
なるほど。聴者が耳栓をして騒音をシャットアウトするように、薄葉さんは人工内耳を外して、聞こえない状態にしているんだね。どれだけ対策しても子どもの声は漏れてしまうから、周囲の人たちが理解を示すことも大事だよね。

薄葉
屋内であれば防音対策は可能だけど、屋外で遊んでいる時は難しいよね。それと、視点を転換することも大事だよね。私は、記事を書く時とか、業務に集中したい時は周囲の雑音が聞こえない方がはかどって便利だから、人工内耳を外すのは一石二鳥だなって考えるようにしているよ(笑)

ミライ
ポジティブな方向に視点を転換しているんだね(笑)。でも、オンライン講義や会議の時はどうしているの?全く聞こえないと困るでしょ?

薄葉
オンライン講義や会議の時は、窓を閉め切って、カーテンを閉めて、子どもの声が届きにくい部屋へ移動して仕事をしているかな。

ミライ
いろいろと工夫して、薄葉さんなりに周囲の音と折り合いをつけて生活しているんだね。

 

誰もが聞き取りやすい話し方の実践は、ユニバーサルマナー


ミライ
話し方に話題を戻すと、ゆっくりはきはきとした話し方は、聴覚障害のある人だけではなく、聞こえている人にとっても聞き取りやすいよね。

薄葉
そうだね。単純に聞き取りやすいのはもちろん、配慮してくれていることが伝わってくるから、好印象を持つんだと思う。話し方から、その人のユニバーサルマナーを感じるんだよね。

ミライ
以前読んだ、全盲の講師・原口さんのブログ記事を思い出した。視覚障害のある人って、声や話し方で誰かを好きになることが多いって話。あらためて考えると、声や話し方って人の印象を決めるうえで、大事なのかもしれないね。
ブログ『視覚障害者って一目惚れするの?』

 

前編はここまで!
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