こんにちは、ユニバーサルマナー講師の薄葉です。今回はお届けするのはユニバーサルマナー対談。社会で活躍する障害のある方との対話を通じて、多様性をお伝えします。また、ゲストのライフストーリーを追体験しながら、ユニバーサルマナーの必要性について一緒に考えていただければうれしく思います。
◇第1回記事
【多様性を知る対談】辻さんと聴導犬のノエル①「聴覚特別支援学校の話」
インタビューアー:薄葉ゆきえ
株式会社ミライロ ビジネスソリューション部 ユニバーサルマナーチーム 講師
薄葉ゆきえ
…聴覚障害のある講師として「外見からは見えにくい障害」に対する理解推進を目指し、全国の企業・自治体・学校などで講演を行う。
インタビュイー:辻 海里さん
――前回は聴覚特別支援学校での話や、ドッグトレーナーを目指すに至った経緯を伺いました。
ドックトレーナーの専門学校での授業はいかがでしたか?例えば、情報保障などは?
専門学校の先生や生徒には、口を大きく開けてはっきりと話してほしいとお願いしていしました。授業でわからないことがあれば、その場ですぐに聞きに行き、その都度、教えてほしいとお願いしていました。できる限りの協力はしていただいたと思っています。それでも大変なことはたくさんありましたが、自分が興味ある分野の学業だったので、特に苦労を苦労とも感じませんでしたね。
聴導犬※ に関心を持つようになったのもドックトレーナーを目指したことと関係がありますか?
※ブログ「補助犬と出会ったら知っておきたいこと」
はい。聴導犬のことは専門学校時代に知りました。ただ、僕は聞こえないので、残念ながら聴導犬の訓練士にはなれません。その代わりに聴導犬パートナーとなって聴導犬の普及活動をしてほしいと言われたことが、聴導犬を迎えるきっかけになりました。
聴導犬の名前はノエルでしたっけ?
はい、ノエルは2代目の聴導犬です。初代の聴導犬はトイプードルのサスケと言います。
初代のサスケはどういう性格の聴導犬でしたか?
サスケは生真面目で責任感が強く、きれいなお姉さんが大好きでしたね(笑)
そうなんですか(笑)2代目のノエルはどんな性格ですか?
ノエルは優しい性格で怒ったところを見たことがないです。サスケは亡くなってしまいましたが、聴導犬を引退してからも一緒に暮らしていました。サスケというお兄ちゃんが一緒にいたせいか、ノエルは末っ子気質で甘えん坊ですね。
聴導犬は引退後もユーザーさんと生活を共にするのですか?
それはユーザーによります。僕は、聴導犬はパートナーというだけでなく、自分の心や体の一部だと思っているので、看取りたい気落ちが強いです。ノエルが聴導犬を引退後してからも一緒に暮らすつもりです。
聴導犬パートナーとして何か印象に残っているエピソードなどあれば、教えていただけませんか?
20代の頃、ミュージカルやAKB48のライブに行くことが好きだったんですが、観劇やライブの際、耳が聞こえないからサポートがほしいと伝えても門前払いの状態でした。それが、聴導犬パートナーになってからはサポートを受けやすくなりました。おそらく、聴導犬という存在から、耳が聞こえないというのはどういうことだろう?と考えてもらえる機会が増えたのだと思います。例えば、AKB48の握手会でファンがお目当てのアイドルと握手や会話できる時間は通常10秒~20秒くらいなんですが、聴導犬パートナーになってからは筆談の時間を考慮してくれるようになりました。他のファンの方からしても、聴導犬を連れていることによって「あの人は聞こえない人なのか、じゃあ、他のファンよりコミュニュケーションに時間がかかっても仕方ない」という風に受け止めてくれるようになったんだと思います。また、ライブやミュージカルでは、歌詞の字幕をモニターに出してくださったり、台本や歌詞カードを貸してくれたりする配慮をしていただきました。
それは、素晴らしいユニバーサルマナーですね!
はい、本当に嬉しかったです。
逆に、聴導犬と一緒にいることで困ったことなどはありましたか?
はい、トイレの問題で困ることがあります。
補助犬が排せつをする際には『バリアフリートイレ※ 』を使いますよね?
※ブログ「多機能トイレと多目的トイレの違い」
(2020年公開記事のため「多機能トイレ」と表現しています。2021年に国土交通省において表記が統一されました。)
はい。とはいえ、バリアフリートイレは設置数がまだ多くないです。また、車いすユーザーやオストメイトの方も使います。おむつの交換をする人も使用します。そうすると、どうしても順番を待つことが多くなりますし、僕自身もそうした方のために使用を控えなくてはという気持ちにもなります。ですから、補助犬用のトイレがあると助かるんです。
補助犬用のトイレはどういったところに設置されていますか?
市役所、ホテル、空港、デパートなどの商業施設などに設置されています。ただ、屋内の補助犬用トイレは施錠されており、使用したい時に係の人に伝えて鍵を開錠してもらわないといけないので、使用したい時にすぐには使用できません。
それは不便ですね。係の人にはどのような方法で連絡するのでしょうか?
施設にあるインターフォンから連絡しなくてはいけないのですが、僕は聞こえないのでインターフォン自体が使用できません。そうなると、施設のどなたかに口頭で伝えて、開錠してもらうのですが、時間がかかりすぎてしまうので、急いでいる時は諦めて外の公園や路地などで聴導犬に排泄させます。ですから、補助犬用トイレは屋外に設置してもらえる方が使い勝手が良いです。
なるほど。ちなみに、どこの施設に屋外の補助犬トイレが設置されていましたか?
僕がパッと思いつくのは東京の京王プラザホテルと、沖縄の那覇空港です。
◇京王プラザホテルの補助犬用トイレ
◇那覇空港の補助犬用トイレ
第2回はここまでです。
次回は「聴導犬に出会ったときに、お願いしたいこと」をお聞きします。