視覚障害のある社員の声をもとに、災害時における困り事や、周りの人が出来るサポートを紹介するシリーズ。後半の今回は、災害後に避難所で困ることについて詳しく解説していきます。
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避難後の困り事
避難後、無事に帰宅できる方もいますが、中には避難所で生活をすることになる方も多くいます。避難所では、どのような困り事があるのでしょうか。
<トイレの区別が分からない>
避難所のトイレは、バリアフリー対応になっていないものや、仮設トイレである可能性も高いです。そのため、色で識別しにくかったり、自動音声アナウンスも流れていなかったりすると、視覚障害のある方には男女の区別が分からないというトラブルが起こりやすいです。
標識が小さく分かりにくい場合は、弱視の方にも区別がしにくくなります。簡易的に紙や段ボールで拡大した標識を作成するなども効果的です。
全盲の方は、看板で目立たせても区別が難しいため、音声アナウンスが出来ない場合はテープや輪ゴムなどをトイレ入り口付近の手すりや壁に設置し、目印の有無で男女の区別をするという工夫も可能です。
<掲示板や案内図に何が書かれているかが分からない>
避難所では、新たな情報を全員に伝えるために、貼り紙などで周知をされることも多いです。しかし、目で確認する文字情報だけでは、視覚障害のある人には十分に伝わりません。食事の配給タイミングが分からない、トイレやお風呂など公衆衛生に関わる情報が分からないなど、伝わらないことで様々な不便を引き起こしてしまいます。中には、仮設住宅の申し込みなど、重要な情報を知らずに過ごしてしまうという事例もあります。
避難所としては、文字に加えて音声でも情報を流す、視覚障害のある人がいることを把握している場合には、口頭で本人にお伝えするなどが適切な対応となるでしょう。
<自分のスペースが分からない>
最近ではコロナ対策もあり、パーテーションなどで避難所での自分のスペースを区切りやすくなっているところもあります。ただし、何も目印がないと、視覚障害のある方は自分がどの位置にいたのかが分からなくなってしまいます。間仕切りを用意したり、トイレに行きやすい場所を優先的に確保するなどの工夫が必要です。
周りの人ができること
無事に避難できたとしても、障害のある方には不便や不安に繋がる要素が多いのが現状です。視覚障害のある方だけでなく、さまざまな理由で配給の場所までたどり着くのが困難な方、大きな音や足音が苦手な方などもいらっしゃいます。まずはそのような人々がいることの理解をいただければと思います。
そして、もし実際にお困りの方が近くにいらっしゃったら、是非お声がけをいただきたいのです。避難所だけの対応では追いつかないこともあり、情報が入ってこないことや、間違って迷惑をかけてしまうことを不安に思われる方も多いはずです。
不安や不便の解消だけでなく、困った際に頼れる人が近くにいることがわかると、非常に安心できます。また、トラブルを未然に防ぐために、本人から協力をお願いされる場合もあり得ます。そのようなときでも、是非快く受け入れていただければと思います。