視覚障害がある社員の声をもとに、災害時における困りごとや周りの人ができるサポート、災害が起こる前の対策などをご紹介します。
災害発生時の困りごと
個人の特性や状況によって変わりますが、目が見えないと「テレビやラジオなどで地域の大まかな情報は分かっても、家の中がどうなっているかわからない」「避難しようとしても、近隣の道路状況や避難所までの適切なルート、慣れた道が通れない場合の迂回ルートが分からない」などの困りごとが起こります。
実際に、弊社の視覚障害がある社員は、一人で屋内にいる際に大きな地震に遭遇したことがあります。室内で何かが倒れた音や、聞きなじみのない音が響いているのは分かりますが、見えないためどこで何が起きているのか分からず、非常に不安を覚えたそうです。そんな時、知り合いから連絡があり「私が着くまで動かないで」と言ってもらえたことで安心できたそうです。近くにお住まいでなくても、お知り合いが災害発生地域にいる場合、メールや電話での安否確認があるだけでも安心度はぐっと高まります。
避難中の困りごと
避難中、倒壊した建物や浸水などで道が阻まれていても気づくことが難しくなります。また、避難所までの道を知っていても普段の状況を音・匂いなどで把握している場合は、いつもと違う状況で方向感覚を失ってしまうこともあります。
事前にできること
災害が起きる前に準備しておくと、トラブルを最小限に抑えられることもあります。視覚障害のある当事者自身ができることとして、例えば以下のような工夫が挙げられます。
- 家具の転倒を防ぐ滑り止めなどをつけておく
- 落ちて割れたものを踏まないように、床にカーペットなどを敷いておく
- 割れるのを防ぐために、食器などは引き出し形式の場所に収納する
- 普段から割れにくい食器を使う
- ラジオをいつでも使えるように用意しておく
- 携帯電話で情報収集し続けられるように、ポータブル充電器を用意しておく
障害の有無に関係のない基本的な対策も多いですが、視覚障害のある方にとっては特に重要な対策です。目が見えないと割れ物や倒れたものに気づかないため、誤って踏んだりぶつかったりしないような対策が必要です。
また、音声情報だけが頼りになるので、ラジオや携帯電話をすぐに、そして継続して使える準備が必要です。ここで挙げているものは一部ですが、もし使えるものがあればぜひ参考にしてみてください。
そしてもう一つ、災害が起きる前に確認しておきたいのが、避難所や浸水情報などが記載されている防災マップです。浸水情報などは危険度によって色付けされていることが多いですが、視覚障害のある方は色で判断できません。色だけでは自分の住んでいる地域がどれほど危険な場所なのかが分かりません。
事前にお知り合いなどにマップの情報を伝達してもらうか、自治体によっては音声付きのマップを用意されている場合もあるので、そういったもので事前に情報を整理しておくことをお勧めします。
まとめ
今回は視覚障害のある方を中心に、災害時の困りごとをご紹介しました。
災害時には、視覚障害のある方だけでなく、聴覚障害のある方、発達障害のある方、車いすユーザー、障害の有無にかかわらずパニック状態の方、高齢者、ケガをされて歩行が困難な方など、一人での避難が難しい状況の方が多くいます。
ご自身の命を優先し安全を確保した上で、困っている様子の方を見かけた際に声かけやサポートをしていただくことで、安心して過ごすことができます。
後編はこちら