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ブログ・お知らせ

聴覚障害者が買い物する際の困りごととは?

ユニバーサルマナー講師の薄葉ゆきえです。


聴覚障害のある講師として、全国各地の様々な企業、自治体、教育機関などで講義を担当しています。
耳は聞こえませんが話せますので、講義は声でお伝えしています。
(※中途失聴者とは?:元々は聞こえていたが、自己や病気などが原因で聞こえなくなった人。耳は聞こえないが、話をすることは可能な場合が多い。)

突然ですが、耳の聴こえない人が外国人に筆談してもらいたい時、どうすればいいでしょうか?
私が住んでいる東京には、某フランス外資の冷凍食品専門店があるのですが、本日はそこへお買い物へ行った時のエピソードについて、ご紹介します。
私の体験談を例として、コミュニケーションの本質と、聴覚障害のある人がお買い物をする際の困りごとを解消する方法について、一緒に考えてみましょう。

写真 冷凍食品が陳列してあるショーケースの前に、買い物カートが置かれている様子

「あるある!」聴覚障害者の日常で起こる、困りごと

店内にて。
いつものように買い物かごに、冷凍の総菜や食材をてんこ盛りにしていると、とある店員さんに話しかけられました。

緊急事態宣言下ですから、もちろん店員さんはマスクを着用しています。
話しかけられていること自体はわかりましたが、口元がマスクで隠れて見えない状態なので、店員さんが話している内容までは理解できませんでした。

ここまでは皆さんもご存じのように、聴覚障害者のよくある困りごとです。
通常、そういう時は「すみません、私は耳が聴こえないので、お手数ですが書いていただけませんか。」とお伝えし、筆談対応をしていただいています。
ただし、この日はちょっと例外でした。
声をかけてくれたのは、外国人※の店員さんだったのです。

※外国人の表記について
「people from different/other countries」直訳すると「(自分の出身国とは)異なる国出身の人々」という意。
本記事では、「日本語が母語でない、海外から日本へ移住した方々」という意味合いで使用しています。
 在留外国人数は288万5,904人(2020年6月末時点)
 詳細はこちら(出入国在留管理庁 在留外国人統計表)

聴覚障害者 meets 外国人の店員さん! 

私が通う冷凍食品専門店では、場所柄か、外国人の店員さんが多く働いています。
繁盛しているお店なので、いつも店員さんは忙しそうで、その日までは話しかけられたことはありませんでした。

ところが、その日は買い物客が私しかいない状況だったため、20代くらいの(おそらく)男性の店員さんが話しかけてきたのです。
こういう時、私はいつも心の中で葛藤を感じてしまいます。

写真 思索にふける人をモデルにしたブロンズ像

「この店員さんは、日本語が書ける人かな?」
「筆談をお願いできるかな?」
「筆談をお願いしても、日本語が書けない人だったら恥をかかせてしまうかも?」
「英語で書いてもらおうかな?」
「いや、英語圏の方とは限らないな。」
「フランスに本拠地がある店だから、フランス人の店員さんかな?」
一瞬の間に、色んなことを考えます。

そして、散々葛藤した挙句に結論が出ない場合には、あまり良くないことなのですが、「笑顔と会釈で曖昧に受け流す」ということを、してしまったり…。

 笑顔と愛嬌は万国共通 

この日も、いつものように心中では、ひとり悶々と葛藤していました。

ただ、いつもと違ったのは、この店員さんが、本当にびっくりするくらいフレンドリーな雰囲気の方だったんです。
目までくしゃくしゃに笑って話しかけてくれて、無邪気な少年か、人懐っこい子犬のような雰囲気の方でした。

いつもであれば、葛藤した挙句に、外国人の方に筆談をお願いできない私ですが、この時ばかりは店員さんの人懐っこい雰囲気に心を動かされて、思い切って筆談をお願いしてみることにしました。

私が耳が聴こえないことをお伝えすると、この店員さんは、胸に手を当て「驚いた!」という仕草をした後、「ちょっと、待っててね」という風に指を1本立てて、カウンターまでダッシュで走っていき、メモ用紙に何かを書いた後、また、走って戻ってきました。
お世辞にも読みやすいとは言えない筆跡でしたが、メモ用紙には、こんな文章が書かれていました。

「なにか ごようあれば わたくしめに おもうしつけください」

写真 人が紙にペンで何かを書いている、筆談の様子

コミュニケーションにおいて大切なのは、言語そのものではない 

おそらく、漢字は書けなかったのでしょう。
全文がひらがなで書かれていました。
そして、いったい何を教材にして日本語を学んだのか不思議に思うような執事調の文章でしたが、彼の意図はこちらに十分に伝わりました。

残念ながら、この日は「 ごよう 」は特になかったのですが、店員さんの心のこもった応対に、「ありがとうございます!」と、こちらも心からの笑顔を返すことができました。

今回のケースは、母語が日本語ではない外国人と、耳が聴こえない聴覚障害のある人が筆談でコミュニケーションをとったというエピソードでしたが、この経験から、私は3つのことを学び直しました。

教訓その1

外国人(または、外国人的な見た目)だからといって、日本語が不自由であると決めつけるのは、思い込みであり、" 過剰な "配慮である。

教訓その2

母語が異なる人同士の異言語コミュニケーションであっても、いくつかの単語とジェスチャーに加えて、笑顔と愛嬌がさえあれば、日常会話レベルでの意志疎通は十分に可能である。

教訓その3

聴こえない人と外国人の方との間でコミュニケーションがとれるなら、同じ日本語話者同士、聴こえるとか、聴こえないとか関係なく、もっとコミュニケーションはとれるはず!

その日を境に、外国人の店員さんとのコミュニケーションにあれほどプレッシャーを感じていた私の「葛藤」や、コミュニケーションを抑制していた「過剰な配慮」は、消えてなくなりました。
当たり前のことですが、話しかける側も、話しかけられる側も、「相手を知るために、あれこれ考え過ぎずに、まずはコミュニュケーションをとってみる」って、大事なことですよね!

聴覚障害者が買い物をする時に、あると便利なお役立ちグッズとは? 

今回のケースは、店員さんが日本語で筆談ができ、私が話せたという2つポイントがコミュニケーションの成功要因でした。
では、日本語がまったく書けない外国人の店員さんと、まったく話せない聴覚・言語障害のある人の事例では、どのような工夫が必要なのでしょうか?

コロナ禍でマスク着用が奨励されている今のご時世。
マスクで口元が読めない、話し手の声がくぐもって聴こえづらいなどの理由から、聴こえない、聴こえづらい人の困りごとが増えました。
もちろん、私も同じです。

特に日常生活で困るなぁと思うのは、スーパーやコンビニなど、小売店でのお買い物です。

最近では購入手段の多様化が進み、ECサイトから食品や日用品を簡単に購入できるようになり、本当に便利な時代になりました。
とはいえ、「直接、現物を確認して購入したいな。」とか、「買い忘れたから、今すぐ買いに行かなきゃ!」なんてこともあったりして、3日に1回くらいの頻度で、スーパーやコンビニに行ったりします。

ただし、皆さん。忙しい時間帯のスーパーやコンビニのレジの状況をちょっと思い出してみてください。
お店が混んでいて、レジでは流れ作業的に淡々と会計が進められていくなか、自分の後にたくさん待っている人がいて、それこそ、行列ができている状況なのに、忙しそうな様子の店員さんにお願いして筆談してもらう…、これって、当事者としては、非常に心理的なハードルが高いものなのです…。

こんな時に社会に普及するといいなと思うのは、店員さんとお客さんの双方が、指差しでお互いの意図を確認し合える「コミュニケーションボード」です。

レジでの会計時、店員さんから、毎回、色んな事を訊かれますよね?
「お弁当は温めますか?」
こんな時に、指差しで質問できるコミュニケーションボードが手元にあれば、店員さんも忙しい手を止めて、わざわざ筆談しなくても済みますよね。

店員さんが外国人の場合で、なおかつ、日本語の読み書きが苦手だったとしても、イラスト表記付きのコミュニケーションボードがあれば、確認作業はスムーズです。
また、声を出さずに、指差しで返事ができますので、発話ができない聴覚・言語障害のあるお客さんも非常に助かります。
さらには、こうしたコミュニケーションボードがお店に設置されていれば、他にも、外国人、高齢者、お子さん、知的障害者のある方など、たくさんのお客さんにとって便利ですよね!

コミュニケーションボードは紙に印刷して設置してもいいですし、iPadなどのデバイスの画面上に表示し、お客さんに選択してもらう方法でも良いと思います。

余談ですが、最近では、聴覚障害のある当事者が作成した、イラスト付きのエコバッグも新聞などで取り上げられ、話題になりましたね。
◆西日本新聞「レジ袋×」「ここで食べます」エコバッグで“会話” 聴覚障害の漫画家考案

こぼれ話

ちなみに以前は、今のようなカスタマーディスプレー(お客さんが直接確認できるように、お客さんに向けて商品の合計金額を表示したディスプレー)が付いたレジスターは一般的ではありませんでした。
旧式タイプのレジスターは、商品の合計金額が店員さんにしか見えない状態だったので、店員さんの「○○円です。」という声かけに従って支払いをするという方式でした。

私はこれが聞き取れずに何度も聞き返してしまい、迷惑をかけてしまうことが日常茶飯事でした。
また、当時はクレジットカードが使えるお店も限られていました。
そのため、迅速に対応ができるように必ずお札で支払いをした結果、いつもお財布がお釣りの小銭でパンパンの状態でした…泣

最近では、レジスターの形状も改善されたり、クレジットカードやスマホ決済も一般的に導入されるようになり、本当に便利にお買い物ができる時代になりました。
私のお財布もすっきりスリムになりました。
聴覚障害のある当事者としては、うれしい限りです。

まとめ

皆さん、いかがでしたか。
本日は私の体験談を通じて、コミュニュケーションの本質や、聴こえない、聞こえづらい人が買い物をする際に感じている、困りごとについてお伝えしました。

本日のお話が少しでも皆さんのお役に立てましたら、嬉しく思います。最後までお読みいただき、ありがとうございました!
聴こえない、聴こえづらい人とのコミュニュケーション方法についてお伝えする、ユニバーサルコミュニュケーション研修を随時実施しています。
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