こんにちは、ユニバーサルマナー検定講師の薄葉です。講師として全国各地の企業や自治体、教育機関で研修や講演を担当しています。本記事ではユニバーサルマナー講師の体験をお伝えしています。
中編では
・入院~手術当日
・手術当日(起床~手術前)
・手術当日(手術後~就寝)
・手術後
・退院~人工内耳の音入れ
についてお伝えしました(中編はこちら)
※今回の記事は当時の日記も参照し執筆しました。あくまで私の体験になりますので、すべての人工内耳装着者に当てはまるわけではない点はご留意ください。
手術から1年以上が経過した現在
手術から1年3カ月が経過した現在では、語尾が丸まって聞こえる不思議な聞こえ方はなくなりましたが、機械的でこだまのように反響する音の聞こえ方は少し残っています。
ちなみに、人工内耳を装着して数カ月の間は、自分の声がアニメに出てくる小学生くらいの女の子のかん高い声に聞こえていたので、常に自分の声に違和感を覚えていました。
今、私が「人工内耳の聞こえ方ってどんな感じ?」と聞かれた時は、聞こえる人には「音が反響するお風呂場で機械の合成音声をお風呂場のインターフォン越しに聞いている感じ」、聴覚障害者のある人には「軽度の難聴の聴力で、感音性難聴(音が歪んで聞こえる難聴の一種)の状態に戻った感じ」と答えています。
音や声の聞き取りはできますが、聴者と同じ聞こえ方をしているわけではないので、日常生活や職業生活で全く情報保障やコミュニケーション保障がないのはちょっと厳しいかなという所感です。
人工内耳装着者への配慮として個人でできることとしては、可能であれば会話の際にはマスクを外す、口元が見えるように正面の位置で話す、同時に複数の人が話す場では、話し声が重ならないように話す、会話の補助として音声を文字化するアプリケーションを使用する、などがありますので、周りに人工内耳装着者がいらっしゃるようでしたら意識してみてください。
人工内耳装着後のリハビリについて
人工内耳は手術が完了すれば終わりというものではありません。補聴器と同じように定期的に機械の調整(マッピング)が必要です。私の場合は、人工内耳装着開始から3か月間は2週間に1回、4か月目に1か月に1回になり、以降3カ月に1回、装着から1年が経過した現在では、半年に1回のペースで調整に通っています。
また、人工内耳を装着し始めてから、リハビリや言語訓練が必要になります。例えば、オーディオブックを聞き、音声を正しく聞き取る自主訓練や、人によっては言語聴覚士の先生から個別で言語訓練を受ける必要があります。
私の場合は元々聞こえていた頃の音の記憶があるため、個別の訓練はなく、音の聞き取りの自主訓練(脳が音を思い出し、正しく脳内で音声を情報処理ができるようにするためのリハビリ)が必要でした。
私のおすすめはYouTubeです。最近では字幕が付いているチャンネルも増えてきました。私はYouTubeを視聴し、話し手の話に合わせて字幕で内容を確認する方法でリハビリを行いました。YouTubeのおすすめポイントとしては、
①真面目なオーディオブックの内容よりも、YouTubeの内容の方がおもしろいものが多い。
②YouTubeのトークは、書き言葉ではなく話し言葉で、かつ通常の会話のスピードに近い速さで進むので、日常生活でのコミュニケーションに近く実用的(正しい文法の日本語で訓練したい方には、オーディオブックをおすすめします)
③YouTubeは無料で視聴できる。
もしよければ、参考になさってみてください。
人工内耳の効果について
人工内耳について、手術後約60%の人が、「大変満足、大体満足」と回答し、また、「人工内耳を受けてよかったか?」という質問に対し、97%の人が「大変、まあまあ良かった」と回答しているそうです。
※調査結果(国立研究開発法人科学技術振興機構 (JST) が運営する電子ジャーナルプラットフォームJ-STAGEで公開されている論文)
私も人工内耳の手術を受けて良かったと思っています。私自身に適性があり、当初の想定以上に聴力が回復したこと、家族を多少なりとも安心させられたこと、また、日常生活や職業生活の選択の幅が広がるなど、利点に繋がったことも多かったからです。
手術を執刀してくださった主治医、人工内耳の調整を担当してくださっている言語聴覚士、入院生活を支えてくださった看護師の方々、人工内耳の手術を負担なく受けられた日本の社会保障制度、手術までの不安な日々を支えてくれた家族や友人達には感謝してもしきれません。今この場を借りて感謝の気持ちを伝えたいと思います。
最後に
ここまでお読みいただいた皆さま、いかがでしたか?
この記事では中途失聴者でユニバーサルマナーの講師である私が、人工内耳の手術をした経験をお伝えしました。
今後人工内耳の手術を検討している方のお役に立てましたら、また人工内耳について関心がある方への情報提供となりましたら、大変うれしく思います。
※今回の記事は当時の日記も参照し執筆しました。あくまで私の体験になりますので、すべての人工内耳装着者に当てはまるわけではない点はご留意ください。
最後までお読みいただき、ありがとうございました!