受講者の声 | ユニバーサルマナー検定

【前編】開業61年、ホテルニューオータニが挑む「心のバリアフリー」

作成者: ユニバーサルマナー協会|2026年01月21日

開業61年を迎え、多様な背景を持つお客さまが日々訪れるホテルニューオータニ。国籍、年齢、訪れる目的…実に幅広いニーズが交差するホテルにおいて、「誰もが安心して滞在できる環境」を整えることが、今や欠かせない視点になっています。今回ユニバーサルマナー検定を受講された3名の皆さまに、日々の業務で感じていることや検定受講の背景、そして今後のホテルづくりへの想いを伺いました。

<インタビュー回答者>
・プロジェクト室 大谷さん
・客室課 溝井さん
・フロントオフィス 福永さん


皆さまの普段のお仕事内容について教えてください。

■大谷さん(プロジェクト室)
―“ホテルの未来”をつくる役割として

プロジェクト室では、中長期の経営計画の策定を中心に、ホテル全体のブランディングやクオリティ向上に関わる業務を行っています。その一環として、プロジェクト室が今回の心のバリアフリー認定(※1)取得を主導しました。認定取得だけで終わらせず、「現場の対応力も強化したい」という想いから、ユニバーサル対応を推進するチームの立ち上げを担当しました。

※1:心のバリアフリー認定:バリアフリー対応や情報発信に積極的に取り組む姿勢のある観光施設を対象として、観光庁が認定する制度。
参考:観光施設における心のバリアフリー認定制度

認定を取るだけではなく、スタッフ一人ひとりが多様なお客さまに向き合うための知識を持つことが大切です。ユニバーサルマナー検定の受講は、その第一歩を踏み出すための大切な機会になると考えました。

■福永さん(フロントオフィス課)
―国内外のお客さまが交差する“現場の最前線”

フロントではチェックイン・チェックアウト業務、荷物のお預かり、電話応対など、お客さまの第一印象をつくる重要な役割を果たします。近年はインバウンドの増加により、「気付けばフロントカウンターに並ぶお客さま全員が外国籍」という日もあるほど。

加えて、障害のある方、ご高齢のお客さま、小さなお子さまを連れたご家族など、多様なニーズが行き交う場所でもあります。マニュアルがあるわけではないため、自分自身が実践しながら後輩に伝えることも多いです。状況に応じて、お客さまが不安を感じないように臨機応変に対応することが求められています。

たとえば、車いすユーザーのお客さまには目線を合わせるために姿勢を低くする、カウンター越しではなく近くまで回るなど、少しの工夫で相手にとって感じ方が変わります。迷っているスタッフがいれば、まず私が実際にやって伝えるようにしています。

■溝井さん(客室課)
―“困りごと”に一番近い場所から改善を生み出す

客室係として、溝井さんは客室のメンテナンスを担当しながら、ユニバーサル対応の中心的役割も担っています。特に、「お客さまから頂く声を拾い上げ、改善につなげる役割」が大きいと言います。

「浴室で手すりが必要、洗面台が使いづらい、ベッドが低くて立ち上がりづらい…など、実際にお部屋で困るポイントは本当に人によってさまざまです。その声を聞いて、どうすれば快適に過ごしていただけるかを考え続けています。」

溝井さんは、寄せられた要望を受けて、以下のような改善を実施されています。

・バスタブの形状に合わせて使える後付けの手すりの追加購入
・数が不足していたシャワーチェアの増設
・ベッドサイドやトイレ周りの設置型サポート器具の導入
・客室ごとに異なる構造に合わせた備品の選定と調整

さらに、「どこに相談したら良いのか分からない」というスタッフの声を受け、客室課内では溝井さん宛に相談すれば対応できる仕組みを社内で整えました。

「担当者が明確になることで、スタッフが声を上げやすくなりました。小さな困りごとも放置されず、すぐに動ける環境が整い始めています。」

 

ユニバーサルマナー検定を受講した背景を教えてください。

当ホテルでは、2025年5月に「心のバリアフリー認定」を取得したことを受け、社内横断的な推進チームを発足いたしました。ホテルの中長期的な計画を担う「プロジェクト室」が主導し、接客、施設管理、デザインなど各部門からスタッフを選任し、施設のハード面とサービスのソフト面、双方からの改善を目的に活動を進めております。

ホテルニューオータニは、お子さまからご高齢の方、また様々な国籍のお客さまに幅広くご利用いただいております。開業61年目を迎え、施設の面で特に多くの課題を抱えている現状において、すべてのお客さまに快適にお過ごしいただくためのホスピタリティによるサポートが極めて重要な役割を担っております。

ユニバーサルマナー検定の受講は、この「心のバリアフリー」を体現する人材を育成し、施設面の改善計画と並行して全社的なサービス水準の向上を推進するための、基盤となる取り組みです。すべてのお客さまにとって快適な滞在環境を、ハード・ソフト両面から継続的に実現することがこのプロジェクトチームの目標です。

■大谷さん

ホテルとして「心のバリアフリー認定」を取得したことを機に、さらに現場スタッフの対応力を強化する必要性を感じたことが最大の理由です。日々お客さまと接するスタッフが「どのように寄り添うのか」を理解することが、ホテル全体の価値につながると考えました。

多様な価値観を持つお客さまが増える中で、ユニバーサルマナーの理解は、今後のホテル運営に欠かせない要素になりつつあると強く感じています。

検定受講では、様々な業種や立場の方々との交流もできたことで視点が広がりました。社内の定例会議でも、議論が抽象的なものから、より具体的かつ実践的な改善策の提示へと深化しました。さらに、館内での車いすウォークスルー体験、筆談用ブギーボードの導入、移乗台の採用など、受講直後から改善が加速しました。

 

多様なお客さまと接する中で、普段から意識されていることはありますか?

溝井さん(客室)
―“気づけるスタッフ”を増やすことです

客室では、特に「お部屋の中の困りごと」は外から見えにくいため、スタッフ自身が気づける目を持つことが重要になります。「足が上がらない」「浴槽をまたげない」など、お客さまがお部屋で抱える困りごとは本当に多様です。それを理解するために、日々スタッフ間で情報共有を行い、“気づける感度”を高めています。また、スタッフが同じ目線で対応できるよう、私自身が現場での事例を共有しながら、知識の共有を行っています。日々の積み重ねを通じて、学び合える環境を大切にしています。

 

他にも、意識されていることはありますか?

「NO」ではなく「提案」をすること
お客さまからご要望や困りごとをお伺いした際、できる限り「NO」で終わらせない対応を社内で共有しています。即座にご要望通りの対応が難しい場合でも、「代替案」や「次善の策」を積極的にご提案し、お客さまのニーズに最も近づける解決策を見つける姿勢は、お客さまとの信頼関係を築く上で最も重要であると考えています。

社内での認識をそろえること
接客の質を均一に保ち、お客さまからのフィードバックを全社の財産とするために、日々寄せられるコメントレターやご意見を社内で幅広く共有しています。これにより、個々のスタッフが多様なニーズに対する対応事例を具体的に把握し、高いレベルで「一定の認識」を持てるように取り組んでいます。この情報共有体制は、お客さま一人ひとりに最適なサービスを提供するための基盤となっています。

続く後編では、反響を呼んでいる「ママ&パパのための館内マップ」の誕生秘話や、ホテルニューオータニが目指す「ユニバーサルなホテルづくり」の展望について、さらに深掘りしていきます。